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| 動物を犠牲にしない「代替法」への転換を |
残酷な動物実験に対する批判が世界的に高まるにつれ、動物実験に代わる試験方法「代替法」の研究開発が盛んに行われるようになりました。
生きた動物を使うのではなく、ヒトの皮膚の培養細胞や、カボチャやソラマメなどの植物由来タンパク繊維網などを利用して化学物質の毒性を図るin vitro試験方法が注目を集めています。コンピュータ・シミュレーション(in silico)の活用も進められています。
動物を犠牲にしない代替法は、倫理的に優れていることに加え、実際に化粧品などの化学物質を使用する人間の細胞を使用することで、動物実験に比べて信頼性の高いデータを得ることができ、また、研究にかかるコストの削減も可能、さらには有毒廃棄物を少量で抑えられるために実験者の安全性向上や自然環境保護の観点からも有益であるなど、たくさんの利点を兼ね備えています。
動物実験をしているメーカーに対しては、動物実験をやめて、代替法に切り替えるように求めていきましょう。 |
- 試験管のなかで毒性を調べる――in vitro試験法
動物実験が行われる分野全体の中で大きなシェアを占めている毒性試験。その方法には、動物実験にあたるin vivo(イン・ヴィヴォ:生体の)試験と、代替法にあたるin vitro(イン・ヴィトロ:試験管内の)試験の2つがあります。
1980年代にアメリカのジョンズ・ホプキンス大学研究所を中心にIn vitro毒性試験系が注目を集めるまで、毒性試験=動物実験という見方が支配的でした。動物実験反対運動の機運が高まると、植物のタンパク構造や細菌、ヒト皮膚培養細胞などを利用したin vitro試験法の開発が次々と進められるようになりました。

- 動物を使う毒性試験はいろいろな問題を抱えている
動物実験は、生きた動物を毒性試験に使用すること自体が倫理的な問題をはらんでいることだけでなく、科学的観点、経済的観点からも以下のような欠点が指摘されてきました。
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実験動物の置かれている環境や拘束状態が試験結果に与える影響が極めて大きく、正確なデータ収集が困難であること |
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動物実験による完全なデータベース作成のためには2〜3年の期間と約一億円の費用がかかるのが普通で、大部分の化学物質が完全に試験されないまま市場に出ていること |
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人間と動物とのあいだには「種差」があり、毒物に対する代謝が異なるため、動物実験によって得られた毒性データは、人間への適用に関してかなりの不確実性を持っていること |
- in vitro試験法の持つさまざまなメリット
一方、in vitro試験法は、動物を使用しないか、あるいはその使用数を減らすことができるという点に加えて、その他数多くの長所を備えています。
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人間の細胞を使って人間の安全性試験を行うことができること |
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経費と時間の圧倒的な削減によって、一層厳格かつ多数の試験が可能になること |
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被験対象の均一性により、環境条件設定が可能なこと |
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必要な化学物質と有毒廃棄物がともに少量ですみ、自然環境保護ばかりでなく、実験者の安全性向上の面からも有益であること |
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継続的なデータをとりつつ長期間(約10年)にわたる試験を行うこともできること(動物は寿命が短く一般にこの種の動物実験は不可能) |
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試験結果の数値化、無限の再現性 |
- 新しいin vitro試験法が確立するまで
新しいin vitro試験法が広く利用されるようになるためには、たんに開発されるだけでなく、その試験法が妥当であるかどうかという評価(Validation)と行政による認定、という手続きが必要になります。欧州ではECVAM(European Centre for Validation of Alternative Methods; 欧州代替法評価センター)、アメリカではICCVAM(Interagency Coordinating Committee on the Validation of Alternative Methods; 官公庁間代替法調整委員会)など、公的支出による代替法研究認定が進められてきました。日本では、代替法の研究開発あるいはその受け入れ等、行政対応が著しく遅れているとの批判を浴びてきましたが、2005年国立医薬品食品衛生研究所の中にJaCVAM(Japanese Center for the Validation of Alternative Methods)が設立され、代替法評価のためのセクションに国家予算が充てられることになりました。これによって、より一層の代替法研究開発に拍車がかかることが期待されています。
- 国際機関でも代替法を受け入れる流れに
化学物質の毒性試験については、各国の行政や国際機関がガイドラインを定めていますが、日本ではOECD(Organization for Economic Co-operation and Development; 経済協力開発機構)が加盟各国に対してその採用を勧告しているテストガイドラインに基づいて各種試験が行われています。*1 このOECDの場にも動物愛護の波は着実に広がっています。
1982年に動物保護問題の重要性が認識され、1996年にはテストガイドラインに代替法を積極的に採用していく意向が示されました。2001年には一度に60匹以上もの大量の動物を使用するとして批判を浴びてきたLD50(急性毒性試験)TG401をガイドラインから削除してより少ない動物でできる方法を採用し、2002年からはOECDの公式会議に各国の動物保護団体からなるICAPO(International Council on Animal Protection in OECD Programmes; 国際動物保護委員会) が正式メンバーとなるなど、国際的な毒性試験ガイドライン策定には、もはや動物愛護の観点が不可欠となっています。なおJAVAは、このICAPOのアジア唯一のメンバー団体となっています。
| *1 |
直接人体に取り込む医薬品については、1991年に発足したICH
(International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use; 日米EU医薬品規制調和国際会議)がガイドラインを策定。日本、米国、EU間で新医薬品開発の規制を整合化することで臨床試験や動物実験棟の不必要な繰り返しを防ぐことができるとされています。 |
- 日本でも動物愛護法に代替法の理念が取り入れられる
欧米諸国からは「日本は代替法の受け入れを進めようとせず、各国間の足並みを乱している」と酷評されてきましたが、日本でも「日本動物実験代替法学会」が1989年の設立以降、日本での代替法研究とその普及の中心として精力的な活動を続けています。JAVAも、日本動物実験代替法学会の賛助会員となって代替法の普及推進に協力しています。
1999年イタリア・ボロニアで開催された「第3回国際動物実験代替法会議」では、「すべての国が、すべての研究・試験・教育の3Rの原則を積極的に組み入れるための法的な枠組みをつくるべきである」などの条文を含む「ボロニア宣言」が採択されました。
こういった研究界の動きも奏功して、ようやく日本でも2005年に改正された「動物の愛護及び管理に関する法律」で3Rの理念が明文化されるに至りました(第41条1項)。
- 化粧品だけでない、代替法がカバーできる分野は広い
たとえば毒性試験においてはIn vitro試験法の開発、あるいはコンピュータ・シミュレーションによる化学物質の毒性予測法の導入などが積極的に進められていますが、このような機運は、特に化粧品の動物実験反対運動によって高まったものだと言えます。
これらの代替法は化粧品やその原料に限らず、医薬品、工業用品、食品添加物など他の化学物質の試験にも利用することができ、動物実験の大幅な削減、あるいは完全な置き換えにつながる大きな可能性を秘めていると期待されています。
- 消費者のニーズが研究を促進させる
現時点では残念ながら、制度の中に組み込まれてしまっているすべての動物実験に代替法が取って代わる段階にまでは到達していません。その研究開発を行うのはもちろん研究者ですが、その研究を後押しするのは、ほかならず私たち消費者、市民の声です。
メーカーや政府に対して「動物実験をやめて代替法開発に力を注いでほしい」との訴えが増えていけば、代替法研究開発に、より一層の力がそそがれるようになり、動物実験がなくなる日も早くなるはずです。
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